人間中心設計のつもりが…実はただのウォーターフォール開発

UXデザインの実践

はじめに

「人間中心設計(HCD)」は、ユーザーのニーズや体験を重視した設計手法として広く知られています。一方で、「ウォーターフォール開発」は、計画重視の線形的な開発手法です。これらは一見すると異なるアプローチですが、現場では「人間中心設計を取り入れたつもりが、実際にはウォーターフォール開発になってしまった」というケースが少なくありません。本記事では、その理由や背景、そして解決策について、わかりやすく理解できるように丁寧に解説します。

人間中心設計とウォーターフォール開発の基本的な違い

人間中心設計(HCD)とは?

人間中心設計は、製品やサービスを開発する際に、ユーザーのニーズや行動を中心に据えるアプローチです。以下の特徴があります:

  • ユーザー参加型:ユーザーが設計プロセスに積極的に関与します。
  • 反復型プロセス:設計→テスト→改善を繰り返します。
  • ユーザー体験(UX)の重視:使いやすさや満足度を最優先します。

ウォーターフォール開発とは?

ウォーターフォール開発は、各工程を順番に進める線形的な開発手法です。以下の特徴があります:

  • 計画重視:最初に詳細な計画を立て、それに従って進行します。
  • 工程の固定:一度完了した工程には基本的に戻りません。
  • ドキュメント重視:各工程で詳細な記録を残します。

なぜ「人間中心設計」が「ウォーターフォール開発」になってしまうのか?

1. 表面的な取り入れ

人間中心設計を取り入れる際、ユーザー調査やプロトタイプ作成といった一部の要素だけを実施し、全体のプロセスをウォーターフォール型の進行にしてしまうケースがあります。これにより、ユーザーのフィードバックが設計に反映されないまま、計画通りに進んでしまいます。

2. 組織文化の影響

ウォーターフォール型の開発プロセスが長年定着している組織では、新しい手法を導入することに抵抗がある場合があります。特に、リサーチやユーザビリティテストの時間が計画に含まれていないことが多く、結果的にウォーターフォール型の進行に戻ってしまいます。

3. ユーザーとの距離

受託開発などでは、クライアントがユーザーリサーチを行い、開発側がその結果を基に作業を進めることが一般的です。この場合、開発者が直接ユーザーと関わる機会がなく、ユーザーのニーズが正確に反映されないことがあります。

4. 柔軟性の欠如

ウォーターフォール開発は、計画通りに進めることを重視するため、途中での変更が難しいという特徴があります。そのため、ユーザーのフィードバックを受けても、設計を大きく変更することが困難です。

人間中心設計を成功させるためのポイント

1. ユーザー参加を徹底する

ユーザーを開発プロセスの初期段階から積極的に参加させ、フィードバックを得る仕組みを作りましょう。これにより、ユーザーのニーズを正確に把握できます。

2. 反復型プロセスを導入する

設計→テスト→改善のサイクルを繰り返すことで、ユーザーのニーズに合った製品を作ることができます。ウォーターフォール型の進行ではなく、柔軟なプロセスを採用することが重要です。

3. 組織全体での意識改革

人間中心設計を成功させるには、組織全体でその重要性を理解し、プロセスを見直す必要があります。特に、リサーチやテストの時間を計画に組み込むことが求められます。

4. ツールや手法の活用

プロトタイプ作成やユーザビリティテストを効率的に行うためのツールを活用しましょう。また、アジャイル開発などの柔軟な手法と組み合わせることで、より効果的な開発が可能になります。

人間中心設計とウォーターフォール開発の比較表

項目人間中心設計ウォーターフォール開発
進行方法反復型プロセス線形的な進行
ユーザーの関与高い低い
柔軟性高い低い
ドキュメント重視度中程度高い
適用場面ユーザー体験を重視する製品やサービス開発要件が明確で変更が少ないプロジェクト

まとめ

人間中心設計を取り入れたつもりが、実際にはウォーターフォール開発になってしまう背景には、組織文化やプロセスの固定化、ユーザーとの距離といった要因があります。しかし、ユーザー参加や反復型プロセスの導入、組織全体での意識改革を行うことで、真の人間中心設計を実現することが可能です。

開発プロセスを見直し、ユーザーのニーズを中心に据えた製品開発を進めることで、より良いユーザー体験を提供できるようになるでしょう。

松岡 号介

広告代理店、Web制作会社、マーケティング会社、システム会社などの業界でWebデザイン、UI/UXデザインを経験し、2022年にフリーランスへ転身しました。中でもUXデザインの分野に強く惹かれ、体系的な学習を開始しました。具体的には認知工学(認知心理学)、行動経済学、HCD、デザイン思考、デザインシステムなど、UXデザインの実践に関する関連知識を深め、資格も取得しました。UXデザインに惹かれたポイントは、ユーザーの行動や心理を科学的に分析でき、再現性高く、より良いユーザー体験を提供できる点にあります。この強みを活かし、UXデザインの実践と普及に貢献したいと考えています。

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松岡 号介

UXデザインに取り組みたいと考えているものの、マインドセットや理論が不足し、実践に移せていないデザイナーやデザイン組織の方々を対象に、伴走型のUXデザイン支援を行っています。認知工学(認知心理学)、行動経済学、HCD、デザイン思考、デザインシステムなど、UXデザインの実践に不可欠な知識を深く習得し、関連資格も取得しています。これら専門知識を活かし、UXデザインをより深く、そして楽しく学ぶことができるよう、初心者の方にもわかりやすく解説することを得意としています。

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