UXデザインにおける「概念モデル」「メンタルモデル」「認知モデル」は、それぞれ異なる視点からユーザー体験を設計するための重要な要素です。以下にそれぞれのモデルについて詳しく説明します。
概念モデル
概念モデルは、システムやプロダクトがどのように機能するかをユーザーに理解させるための抽象的なフレームワークです。これは、ユーザーがシステムの動作を予測し、操作する際の基盤となります。概念モデルは、デザイナーが意図したシステムの動作をユーザーに伝えるために設計され、ユーザーが直感的に理解できるようにすることが目的です。
具体例
- 物理的な製品
蛇口やドアノブなどは、その形状や操作方法から直感的に使い方がわかります。 - デジタルプロダクト
コンピュータの画面上にあるフォルダアイコンは、「現実のフォルダとその中に収納されている書類」というアナロジーを利用しており、ユーザーはフォルダアイコンをクリックすると中身のファイルが表示されることを直感的に理解できます。
メンタルモデル
メンタルモデルは、ユーザーが持つ無意識のうちに形成された思考や価値観の枠組みであり、特定のシステムや状況に対する理解を形成します。メンタルモデルは、過去の経験や文化的背景によって形成され、ユーザーが新しいシステムを使用する際の期待や予測に影響を与えます。UXデザインでは、ユーザーのメンタルモデルを理解し、それに合わせたデザインを行うことで、使いやすさを向上させることができます。
具体例
- メッセージアプリ
アプリ下部にあるテキストボックスは「メッセージ入力欄」として理解され、紙飛行機アイコンは「押すとメッセージ送信ボタン」として認識されます。 - Webサイト
サイト左上ロゴマークは「トップページへ戻る」と理解され、下線付き青色テキストは「リンク」と理解されます。
認知モデル
認知モデルは、人間の認知プロセス(情報処理、記憶、注意など)を理解し、それを基にシステム設計を行うためのフレームワークです。認知モデルは、ユーザーが情報をどのように受け取り、処理し、記憶するかを考慮し、インターフェースやインタラクションデザインに反映させます。これにより、ユーザーが情報を効率的に処理できるようになり、認知負荷を軽減することができます。
具体例
- 認知負荷
マリオカートツアーのホーム画面に多くの色や情報が配置されているため、ユーザーは一度に多くの情報を処理しなければならず、認知負荷が高くなります。 - プライミング効果
Discordアプリの初回起動時に表示されるイラストでカジュアルなコミュニケーションを楽しむキャラクターたちが描かれており、この先行刺激によってユーザーは「ここはゆるーくコミュニケーションを楽しむ場所なんだな」と無意識に認識します。
まとめ
これら3つのモデルは、それぞれ異なる視点からUXデザインにアプローチし、ユーザー体験を向上させるために重要な役割を果たします。概念モデルはシステム全体の理解を助け、メンタルモデルはユーザーの期待と一致させることで使いやすさを向上させます。認知モデルは情報処理効率を高めることでユーザー体験を最適化します。これらのモデルを効果的に活用することで、より良いUXデザインが実現できます。