シナリオベースドデザイン

UXデザインの対象領域

シナリオベースドデザイン(Scenario Based Design)は、ユーザーのタスクとシステムのインタラクションに焦点を当てた人間中心の設計手法です。この手法は、ユーザーがどのようにシステムを使用するかを具体的に想定し、その想定に基づいて設計やデザインを行います。シナリオベースドデザインは、特にユーザーのニーズや期待を理解し、それに応じたデザインを行うことを目的としています。

この手法では、まず「観光がつまらない」「道に迷いやすい」といった問題シナリオを発見し、それらの問題を解決するための活動デザインや情報デザイン、インタラクションデザインを提案します。評価を繰り返すことで、デザインをより良いものにしていくプロセスが含まれています。

シナリオベースドデザインは、ユーザーの実際の行動や心理面に基づいて設計されるため、ユーザー体験の向上に寄与します。具体的には、ユーザーがどのような状況でシステムを利用するかを考慮し、その利用状況に応じた最適なインターフェースや機能を提供することが可能になります。このアプローチは、ユーザーが直面する可能性のある問題やニーズを事前に把握し、それに対する解決策を設計することによって、より効果的な製品やサービスの開発につながります。

また、シナリオベースドデザインは反復的なプロセスであり、ユーザーからのフィードバックを取り入れながら設計を改善していくため、最終的なプロダクトがユーザーの期待に合致することが確保されます。このようにして、シナリオベースドデザインはユーザー中心のアプローチを強調し、効果的なデザインと開発プロセスを促進します。

シナリオベースドデザインのプロセス

  1. ユーザーリサーチ
    • ユーザーのニーズや行動を理解するために、フィールド調査やインタビューを実施します。この段階では、ユーザーがどのような状況でシステムを使用するかを把握することが重要です。
  2. 問題シナリオの作成
    • ユーザーリサーチから得られた情報を基に、問題シナリオ(Problem Scenario)を作成します。これは、ユーザーが直面する具体的な問題や課題を記述したもので、ユーザーの目標や利用状況が含まれます。
  3. 活動シナリオの作成
    • 問題シナリオをもとに、ユーザーがどのようにその問題を解決しようとするかを示す活動シナリオ(Activity Scenario)を作成します。この段階では、ユーザーが取るべきアクションやインタラクションの流れを明確にします。
  4. 情報シナリオとインタラクションシナリオの作成
    • 活動シナリオに基づいて、具体的なユーザインターフェースや操作手順を示す情報シナリオ(Information Scenario)およびインタラクションシナリオ(Interaction Scenario)を作成します。
  5. プロトタイプの作成
    • 作成したシナリオに基づいてプロトタイプを開発します。このプロトタイプは、実際のユーザーインターフェースや機能を模擬したものであり、ユーザーからのフィードバックを得るための重要なツールです。
  6. 評価と改善
    • プロトタイプを使用して形成的評価(Formative Evaluation)を行い、ユーザーから得たフィードバックに基づいて設計を改善します。このプロセスは反復的であり、必要に応じてシナリオやプロトタイプを修正していきます。
  7. 最終評価
    • 最終的な製品が完成したら、総括的評価(Summative Evaluation)を行い、設計がユーザーのニーズにどれだけ応えているかを確認します。

シナリオベースドデザインの利点

  • ユーザー中心の設計
    ユーザーのニーズや行動パターンに基づいて設計されるため、実際の使用状況に即した製品開発が可能です。
  • コミュニケーションツール
    チーム内で共通理解を持つための効果的な手段となり、異なる専門分野間での協力を促進します。
  • 仮説検証
    シナリオによって描かれた仮説は実際のユーザーテストによって検証されるため、デザイン改善につながります。

このように、シナリオベースドデザインはUXデザインプロセスにおいて非常に有効であり、多くの成功事例がその効果を証明しています。

松岡 号介

人はなぜその行動を選ぶのか?――そんな問いへの好奇心から、使いやすさだけでなく「選ばれる体験」をデザインしています。HCD-Net認定人間中心設計専門家/行動経済学1級。感性と論理のあいだを行き来しながら、UIの美しさとUXの納得感を両立させる設計を心がけています。2025年4月からは慶應義塾大学通信課程で哲学・心理・社会を学び直し中。デザインと人間理解を深め、より本質的な価値提供を目指しています。

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松岡 号介

人はなぜその行動を選ぶのか?――そんな問いへの好奇心から、使いやすさだけでなく「選ばれる体験」をデザインしています。HCD-Net認定人間中心設計専門家/行動経済学1級。感性と論理のあいだを行き来しながら、UIの美しさとUXの納得感を両立させる設計を心がけています。2025年4月からは慶應義塾大学通信課程で哲学・心理・社会を学び直し中。デザインと人間理解を深め、より本質的な価値提供を目指しています。

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